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2045年、
新生児検知センターの壁には
巨大なディスプレイが並ぶ。
子どもが生まれると、
わずか30秒で人生予測が生成される。
AIが判定し
妥当性評価委員が承認し
家族に通知が届く。
そこにはこう記される。
《身体適応予測》
《学習最適分野》
《推奨環境地域》
《幸福曲線》
《推奨交友群》
《適合キャリア型》
親は泣きながら喜ぶ。
「この子の未来が保証された」
しかし、その通知を見て
子どもはまだ何も知らない。
主人公は
この制度が始まった年に生まれた。
名前は
八代ミナト。
彼の人生は
“決まって”産声を上げた。
公式記録に記された未来
ミナトの人生予測にはこうあった。
・社会適応性 高
・創造性 中
・倫理傾向安定
・関係構築能力強
・幸福波動曲線滑らか
・離脱傾向低
そして最後に
≪安全で安定した人生になるでしょう≫
親は安心した。
教師も期待した。
行政担当者は承認した。
しかし幼少期のミナトは
違和感を抱いた。
幼稚園児の疑問
ミナトは4歳のときに言った。
「どうして僕は、僕の未来を知らないのに
誰かが先に決めているの?」
大人たちは答えられなかった。
教師は笑って言った。
「安心して育てるためなんだよ」
ミナトはさらに言った。
「安心って誰のため?」
静寂が落ちた。
子どもは真実を暴く。
小学校入学式の日
校門でAIが虹色に発光する。
入学者のデータを照合し
個別学習履歴を送り込む。
クラス分けは
すでに最適化されている。
座る席まで決められている。
隣に座る子は
交友相性が高い。
前後に座る子は
刺激を与え合う構造。
誰もが笑っていた。
しかしミナトだけ
俯いていた。
ミナトの観察
授業中
教師が説明する前に
AIが結論を提示する。
ミナトは思った。
「考える前に答えが出るなら
考える意味はどこにある?」
答えは正しい。
全員同じ答えに到達する。
だがその正しさに
魂が乗らなかった。
ミナトはある日、母に言う
「将来のことは知らなくていい。
僕が歩いて、僕が選んで、
そのあと起こることでいい。」
母は泣いた。
「あなたの未来が不安なのよ…」
ミナトは笑った。
「不安って、未来には必要だよ。」
その言葉が
制度の根本を揺らした。
まだ幼い彼の直感
未来は
安全に確保されるものではない。
未来は
進みながら獲得するものだ。
ミナトは
それをまだ6歳で知っていた。
その直感は
やがて大人の予定表を壊していく。
――第1話 完――
次は
第2話:子どもはなぜ壊したがるのか?
この世代で唯一欠けている価値、
それは「破壊」と「冒険」です。
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