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2045年の子どもたちは、
必ずしも「家族」という関係の中で育つわけではない。
法律上はこう表現されている。
《安定した愛着形成は、血縁・同居・固定的保護者制度とは観念的な一致を持たない》
つまり
家庭の存在は必須ではない
ということだ。
主人公・八代ミナトの友人
七瀬ソラは
その典型だった。
1. ソラには「家」がない
ソラは
-複数の共同居住施設
-週替わりのケア担当者
-時間別の支援体制
のもとで育っていた。
衣食は整っている。
衛生管理も万全。
虐待の可能性はゼロ。
しかし、ミナトは言った。
「ソラの家は、どこ?」
ソラは静かに答えた。
「どこでも、家じゃない。」
2. 家庭の代替としての「生活ユニット」
子どもはこう管理される。
-朝担当
-生活計画担当
-教育モニタリング担当
-心理ケア担当
人は優しい。
ローテーション制は公平。
すべての担当者は善意で接する。
しかしソラは言った。
「みんな優しいけど、誰も残らない。」
これは
制度では埋められない空白だった。
3. 家族とは
「繰り返し会ってしまう関係」
だったのかもしれない
ソラには
会う人が固定されない。
常に新しい人。
常に丁寧な距離感。
嫌われる恐怖も
喧嘩する理由も
謝る機会も
赦す時間もない。
ミナトは聞いた。
「寂しい?」
ソラは首を振った。
「わからない。」
寂しさを定義する前に
人が変わってしまうから。
4. 事件は突然起きた
ある日、職員リストが更新され
ソラにとって一番安心していた担当者
“瀬尾さん”が外された。
理由は
【担当者配置のバランス調整】
ソラは泣いた。
泣く理由は明確だった。
「この人が僕を知っていたから。」
制度は優しい。
しかし
記憶を共有してくれる人
を守ってはくれない。
5. ミナトの行動
ミナトは先生に言った。
「ソラと同じ人がずっと見てくれたらいいのに」
先生は答えられなかった。
制度は常に
平等・効率・公平・安全を基準に動く。
しかしそれは
「偏り」
「しがらみ」
「面倒くささ」
を排除していた。
そしてそれが
人間らしさでもあった。
6. ソラが言った言葉
夕方
空を見ながらソラは言った。
「僕が覚えてる人より
僕を覚えてる人が大事。」
それは
6歳とは思えない核心だった。
ミナトは何も言えなかった。
7. 家族の本質
血縁でもなく
同居でもなく
制度でもなく
役割でもなく
「存在を覚え続ける人」
それが家族だったのかもしれない。
-怒ったときの顔
-泣いた夜
-うまくできなかった日
-笑った瞬間
それを共有し続ける人。
家庭とは
空間ではなく
記憶の同居だった。
8. 最後にミナトはこう言った
「僕は、誰かの記憶になりたい。」
その言葉は
制度の外側にある真理だった。
――第6話 完――
次は
第7話:“役割が見えない”ことへの怒り
です。
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