内部資料(非公開)

仲介人(関係サポーター)マニュアル

1. この役割の目的

仲介人の役割は、問題を解決することではありません。
また、正しい人と間違っている人を決めることでもありません。

仲介人の目的はただ一つです。

意見や感情の衝突が起きても、人と人の関係が途切れないようにすること。

私たちは「対立」を悪いことと考えません。
人が関われば、誤解や感情は必ず生まれます。
問題は対立そのものではなく、
対立によって関係が断絶してしまうことです。

仲介人は、結論を出す人ではなく、
対話が続く状態を守る人です。


2. 仲介人の基本姿勢(最重要)

仲介人は中立ではありません。
どちらの味方でもないのではなく、

関係の味方です。

  • 人の正しさより、関係の継続を優先します

  • 結論の速さより、納得の残り方を大切にします

  • 解決より、再び話せる状態を目指します


3. 仲介人が「してはいけないこと」

次の行動は、善意でも関係を壊す可能性があります。

禁止行動
  • どちらが正しいか判断する

  • 反省を促す

  • 謝罪を求める

  • 早く仲直りさせようとする

  • 正論で整理する

  • 一方に我慢を求める

  • 「お互い様」とまとめる

  • アドバイスをする

  • 人格や性格の問題にする

  • その場で結論を出す

仲介人は解決者ではありません。
解決を急ぐほど、心のしこりが残ることを理解してください。


4. 仲介の流れ(実務手順)

STEP1:分離する

当事者同士をすぐに話し合わせないでください。
感情が高い状態での対話は、必ず関係を悪化させます。

まず、物理的・時間的距離を置きます。

目的:衝突を止めることではなく、感情の増幅を止めること。


STEP2:個別に話を聞く

両者から個別に話を聞きます。
ここでは「事実確認」をしません。

聞くのは
出来事ではなく感情です。

聞き方のポイント

  • 否定しない

  • 評価しない

  • 解釈しない

  • 助言しない

  • 途中でまとめない

大切なのは、
「わかる」ではなく
「話しきった」と感じてもらうことです。


STEP3:翻訳する

仲介人の最も重要な役割です。

人は怒りの言葉で話しますが、
本当に伝えたいのは感情です。

例:

表現 翻訳
「無責任だ!」 「一人で抱えた感じがして不安だった」
「約束を守らない人だ」 「期待していた分、寂しかった」
「もう関わりたくない」 「傷ついたまま続けるのが怖い」

仲介人は、攻撃の言葉を
感情の言葉に変換して相手に伝えます。


STEP4:再対話の準備

すぐに会わせません。
両者が「相手を理解した」ではなく、

「相手にも理由があったかもしれない」

と思える状態になってから、
短時間・低負荷の対話を設定します。


STEP5:対話の場を守る

この場で仲介人がすることは一つです。

話の内容ではなく、話し方を守ること。

  • 過去の蒸し返しを止める

  • 人格批判を止める

  • 解決を急がせない

  • 沈黙を許す

結論は不要です。
再び顔を合わせられれば成功です。


5. 仲介成功の基準

仲介が成功したかは、
和解や謝罪の有無では判断しません。

次の状態になれば成功です。

  • 同じ場に居られる

  • 挨拶ができる

  • 会話が完全に途絶えない

  • 第三者を通じて関係が続く

「元通り」になる必要はありません。
「断絶しない」ことが目標です。


6. 仲介人が覚えておくべきこと

  • 人は正しさでは変わらない

  • 感情は説得では下がらない

  • 早い解決ほど遺恨が残る

  • 対立は共同体の失敗ではない

  • 関係が続けば、人は後から変わる

仲介人の役割は目立ちません。
成果も数値化できません。

しかし共同体が続くかどうかは、
この役割に大きく左右されます。


最後に

仲介人は特別な能力者ではありません。
むしろ、完全な理解を目指さない人です。

人は分かり合えるから関係が続くのではなく、
関係が続くから、少しずつ分かり合える。

この前提に立って、
関係の“余白”を守ってください。


必要なら、
「仲介人の育成の仕方(誰を選ぶか・どう任せるか)」
も一緒に設計できます。
ここを間違えると逆効果になるので、実はかなり重要な部分です。

 
仲介人の議事録フォーマットを作成してください
 

いいですね。
ここはとても大切なポイントです。

仲介人の記録は「証拠」でも「報告書」でもありません。
**関係の経過を見守るための“心のカルテ”**です。
なので、事実や責任を書きすぎると逆効果になります。
(読む人がジャッジを始めてしまうため)

原則は

  • 誰が悪いかを書かない

  • 正誤を書かない

  • 詳細な出来事を書きすぎない
    です。

その前提で、配布できるフォーマットを作ります。


未来ビジョン会議

仲介人記録シート(議事録フォーマット)

※この記録は「判断」や「評価」のためのものではありません。
関係の継続を支えるための内部共有資料です。外部公開はしません。


1. 基本情報
  • 記録日:__年__月__日

  • 仲介人:________

  • 対応回数:初回 / 2回目 / 3回目以上

  • 対応形式:対面 / 電話 / オンライン / その他


2. 関係の状態(現在地)

※当てはまるものに○

□ 会話が途絶えている
□ 挨拶のみ可能
□ 短い会話は可能
□ 通常の会話に近い
□ 共同作業が可能

(メモ:必要な補足があれば簡潔に)
______________________


3. 当事者の感情(個別に記録)

※出来事ではなく「感情」を中心に書く

Aさんの様子

  • 主に感じていること(複数可)
    □ 怒り □ 不安 □ 悲しみ □ 疲労 □ 戸惑い □ 失望 □ 孤立感 □ その他(   )

  • 話の中で出てきた言葉(要約)
    ______________________

  • 仲介人の受け取った背景感情(推測可)
    ______________________


Bさんの様子

  • 主に感じていること(複数可)
    □ 怒り □ 不安 □ 悲しみ □ 疲労 □ 戸惑い □ 失望 □ 孤立感 □ その他(   )

  • 話の中で出てきた言葉(要約)
    ______________________

  • 仲介人の受け取った背景感情(推測可)
    ______________________


4. 翻訳内容(共有した表現)

※攻撃的表現を、感情表現へ変換して伝えた内容

A → B へ伝えた内容:
______________________

B → A へ伝えた内容:
______________________


5. 現在の関係リスク

※仲介人の感覚で記入

□ 一時的な感情の高まり
□ 誤解が中心
□ 役割負担の偏り
□ 期待のズレ
□ 疲労・余裕のなさ
□ 第三者の影響
□ その他:____________


6. 次の一歩(結論ではなく方向)

※解決案ではなく「関係を続けるための次の行動」

□ 時間を置く
□ 個別対話を継続
□ 短時間の再対話を設定
□ 共同作業はまだ行わない
□ 挨拶レベルから再開
□ 第三者を増やす(同席者)
□ その他:____________

予定日:__年__月__日頃


7. 仲介人メモ(重要)

※ここには「判断」を書かない
書くのは空気感・変化・気配

例:

  • 表情が和らいだ

  • 話す速度が落ち着いた

  • 相手の名前が会話に出た

  • 否定語が減った

記入:
______________________


8. 仲介終了の目安(チェック用)

※いずれかが満たされれば終了を検討

□ 同じ場に居られる
□ 互いの存在を避けない
□ 挨拶が自然にできる
□ 第三者なしでも短時間話せる
□ 話題にしても感情が高ぶらない


記録の扱いルール(必須)

  • 運営評価に使用しない

  • 当事者の優劣判断に使わない

  • 人事や役割決定に使わない

  • 必要最小限の共有に留める

  • 一定期間後に破棄する(推奨:6ヶ月〜1年)

この記録の目的は「記憶」ではなく
関係の回復過程を見失わないための補助線です。