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2060年。
社会構造が安定しすぎた結果、
人間の能力は“二極化”していった。
その区分は単純ではない。
しかし確実に存在する。
それが
【逃げる能力】
【続ける能力】
どちらが優れているわけでもない。
しかし違いは明確だ。
そして八代ミナトの世代は
その違いを自覚し始めていた。
◆ 1.逃げる能力とは何か?
逃げるとは
責任放棄でも
失敗回避でもない。
逃げる能力とは
-環境を変える
-立場を下げる
-距離を置く
-関係を整理する
-優先順位を切り替える
能力である。
逃げられる人は
選択肢を作れる人。
ある心理報告書にはこう記される。
《逃走能力の低い人材は
変化に対して過剰滞留が発生》
つまり
居すぎて壊れるタイプ。
◆ 2.続ける能力とは何か?
続ける能力とは
-負荷に耐えられる
-意味の再定義ができる
-自分の責任を引き受ける
-履歴を蓄積できる
-再挑戦ができる
能力である。
続けられる人は
軌跡を残せる人。
しかし
その能力は万能ではない。
ある分析レポートは言う。
《継続能力の高い人材は
環境変化を後回しにする傾向がある》
つまり
手放せず苦しむタイプ。
◆ 3.ミナトは“続ける側”だった
幼い頃から
「手放さず向き合う」性質がある。
仕事でも
家庭でも
仲間関係でも
考え続け
責任を持ち直し
更新しながら進んだ。
しかし
ナツミは違った。
◆ 4.ナツミは“逃げられる側”だった
ある夜
ナツミは言った。
「私はね、途中で離れる力があるの。
続けられないって気づいた時に
距離を置ける。」
ミナトは返した。
「僕は続けたくなる。」
その時
ナツミは笑いながら言った。
「同じ方向に立つのに
違う歩き方が必要なんだよ。」
その言葉は
正しかった。
◆ 5.社会的に最も問題になったのは…
“逃げられない人”の存在だった。
AIの報告書にはこうある。
《高継続個体は
自己損耗が発生しやすい》
つまり
責任を背負いすぎる
相手を手放せない
組織を辞められない
ミナトは
まさにこの傾向があった。
◆ 6.ソラの助言
ソラは言った。
「続ける理由が見えなくなる時は
続けなくていいんだよ?」
ミナトは驚いた。
続けない理由はいつも
“逃げ”に聞こえていた。
しかしソラは続けた。
「逃げることは弱さじゃない。
未完成の場所を守る選択なんだよ。」
その言葉は刺さった。
◆ 7.そのあとミナトは初めて
“続けない”選択をした
プロジェクトの途中で言った。
「僕はここまで続けたけど
これ以上は役割が薄くなる。
離れます。」
上司は深く頷いた。
了承された。
しかしミナトは少し泣いた。
なぜなら
離れることは
失敗ではないが
未完を置いてくることだから。
でも
その未完は
誰かの未来になる。
◆ 8.記録にこう残った
《八代ミナトは継続力の高い個体だが
現時点では離脱決定能力を獲得したと推定》
その言葉に
彼の存在が更新された。
◆ 9.第7話の結論
逃げるとは
終わらせることではなく
未来を別に置くこと。
続けるとは
未来を同じ線上に描き続けること。
どちらも生き方。
どちらも能力。
優劣はない。
ただし――
逃げられる人は未来を守り
続けられる人は未来を育てる
という違いだけが残った。
――第7話 完――
次は
第8話:やりたくないことを放棄する自由
です。
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