15年後、世界はこう変わった

第1話:勤務という概念が崩れた日

未来の仕事1
未来の仕事1

2032年、世界の就労率はデータの上で「100%」になった。
しかし街は暗かった。
通勤する人はほとんどいない。

仕事はAIによる代理処理となり、
人間が手を動かす必要がなくなった。

その年、主人公は会社の玄関でこう言われた。

「あなたの仕事は登録しました。
今後は来る必要はありません。」

主人公の名は 森江レイ
34歳、営業職だった。


会社から受け取った通知書にはこう記されていた。

■人間労働の意味
あなたの役割は「価値観提供」となります。

レイは理解不能だった。

「働かないのに給料が出る?
それは成立するのか?」

しかし会社側の回答は一行。

「あなたの“存在”が価値なので。」


帰宅中の電車は空だった。
街に残るのは巨大広告サイネージだけ。

そこにはこう表示された。

《仕事とは、何を生むための行為か》

レイは答えられなかった。


それから3ヶ月。
給料は振り込まれ続けた。
しかし生活は崩れていた。

朝起きる理由がない。
進む方向がない。

ある夜、AIから通知が届く。

【あなたの幸福指数が低下しています】
【依頼:地域プロジェクトへ参加してください】

誘導された先は
小さな地域コミュニティだった。

彼らは企業勤務を失い、
手持ち時間を共有していた。

レイは木製の椅子を組み立てる作業に参加した。

誰かが言った。

「久しぶりだな、人と汗かくの。」

その時、レイは悟った。

仕事とは
賃金ではなく
距離を作る行為だったと。


帰宅後レイは企業システムに
短いメッセージを送る。

私はここで働きます。
お金はいらない。
楽しく過ごせばそれでいい。

AIの返答は正確だった。

【理解しました】
【あなたの選択は価値として記録しました】

そして最後にこう書かれていた。

【人間の幸福は、人間自身が定義します】

レイは思った。

仕事が消えたのではない。
人間が、意味を選びなおしたのだ。


――第1話 完――


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