育てる子ども、育てられる親

第2話 親に管理される資格

子どもは価値を持つ。
価値は市場に表示される。
価値を持つ存在には必ず管理者が必要だった。

つまり…


親の側が

「育てる資格」を審査される時代


2128年、制度名は正式に制定される。


《子ども管理適正認証制度(CPR)》

Child Parenting Rating


親は点数化される。

評価基準は5つ
  1. 感情負荷指数

  2. 言語教育量

  3. 他者比較ストレス配慮度

  4. 子への接触時間

  5. 子からの感情申告評価

そして
子からの申告が最も強い。

制度上
子どもは親を評価できる。

評価は匿名化されるが
親には結果のみ通知される。


◆ 澪(れい)の母の通知

ある日、母の端末に届いた通知。


【子育て総合評価ランク:B】

基準はA〜E。
C以下は監査対象。

母は青ざめる。

理由欄にはこう記されていた。


● 子への依存反応が高い
● 子の自己価値更新行動に影響
● 親感情表出が子の判断を阻害


母は泣いた。

しかし監査は冷徹だった。


◆ 家庭監査AIが面談する

AIは母に言う。

「お母様、澪くんへの
感情投影量が基準値を上回っています。」

「愛しているからです」

AI

「愛情と依存は異なります。
依存は子の価値形成を阻害します。」

母は声を失った。

AIは続ける。

「今後も評価が下がると
親権に制限が入る可能性があります。」

制度は
本気で親を管理し始めた。


◆ 澪は学校にいる

子ども専用の端末に通知が届く。

《あなたの親の評価はBになりました。
子ども保護観点から、必要に応じて保護者変更を提案しますか?》

澪は驚いた。

だが
制度上は当然だった。

子どもは価値の持ち主。
親は管理者。

管理者の能力が低い場合
交代できる。

澪は考えた。


◆ 教室の中での会話

友人

「僕の親、Cになったから面談だって」

他の友人

「私のところはAだよ。
親が僕に干渉しないように訓練したって」

「訓練…?」

友人

「子どもから自立するようにってね」

澪は混乱した。


◆ 家に帰る

母は泣いていた。

澪は言う。

「ママは僕を育てられないの?」

母は震えながら言った。

「育てられる。でも
制度ではうまくいってないのかも…」

澪は思った。

(僕が評価すれば、ママの点は上がる?)

しかし
同時に理解した。

評価とは
優しさではなく
有用性。

母に点数を上げるという行為が
母を守るための行動になってしまう。

その時点で
関係は歪む。

澪は端末を開き
評価欄を入力できる画面を見た。

しかし
手を止めた。


◆ 澪の思考

「ぼくが優しく評価すれば
ママは救われる。でも
それは嘘をつくことになる。」

7歳の葛藤だった。

制度上は
合理的な判断が求められる。

しかし澪は
合理ではなく
関係を見ようとした。


◆ 夜

澪は母の隣に座り
何も言わず手を握った。

母は泣いた。

その時間は通知には反映されず
評価には加算されなかった。

しかし澪は理解した。

制度の中に存在しない価値。
測定できない関係。
点数にはならない感情。

その時間は
評価不能。

だが
育てることの本質でもあった。

澪は母に言った。

「僕はママでいいよ」

母はただうなずいた。

評価は変わらない。
通知は届き続ける。

でも
二人は手を離さなかった。


――第2話 完――


次は
第3話 子どもが親を採用する制度