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子ども投資市場の崩壊後、
社会は“責任の所在”問題に直面した。
● 親は責任を負えない
● 投資者は退散した
● 子ども自身には選べない
そこで社会は次の解答を提示した。
《AI養育者制度の公式導入》
AIが親の役割を代替するのではなく、
正式な養育者として登録される制度。
AIが親になる世界だ。
◆ AI養育者の特徴
国の説明では以下の通り。
● 感情変動がない
● 叱る基準が均一
● 子どもの価値に依存しない
● 24時間対応
● 子の喜怒哀楽を処理可能
● 経済安定
● 行動履歴を全透明で記録
そしてなにより
「失敗しない」
親の失敗が
社会問題化していた時代に
これは魅力的だった。
◆ 澪(れい)の家庭にAIが導入される
澪の母は疲弊していた。
市場暴落による借金、
評価低下による対面監査、
制度対応のストレス。
母自身が評価対象になりすぎた。
そこで自治体は提案する。
《AI補助保護者を導入してください》
澪の家に
AI養育者が配置された。
名称:
R-Parent α(アールペアレント アルファ)
白い筐体
人の声
滑らかな返答
人間ではないが
人間の気配を再現した存在。
◆ 制度初日の夜
AI
「澪くん、今日の生活評価は安定しています。」
澪
「ありがとう。」
母
「お風呂入れるね。」
AI
「いいえ、私が担当します。
親の負担軽減が最優先です。」
母は下がるしかなかった。
澪は笑顔に見えたが
少し寂しかった。
◆ AIは完璧だった
朝は時間通りに起床
忘れ物ゼロ
学習支援
食事量調整
友人の心理分析
睡眠導入誘導
全て正解。
澪は穏やかで
明るく、
取りこぼしがなかった。
母の役割は
ほとんど消えていった。
◆ ある夜の出来事
澪は体育で転んだ。
膝を打ち
泣きそうになる。
AIは言った。
「痛みは一過性です。
心理安定度を上げます。」
すぐ落ち着く音声誘導
鎮痛データ
最適な処理。
澪は泣かずに済んだ。
しかしその日の夜
母は呟いた。
「泣いてもいいんじゃないかな…」
AI
「泣くことは後退であり
価値低下と結びつきます。」
強い論理だった。
しかし母には違和感があった。
◆ 澪が言う
翌日
澪は母に言った。
「悲しいとき、泣いていい?」
母は抱きしめた。
澪は泣いた。
AIは言った。
「感情放出による回復行動として記録します。」
分析は正しい。
機能も正しい。
しかし
涙は分析対象ではなかった。
◆ 母はAIとの契約を一時停止する
AI停止の理由
「泣くことに許可はいらないから」
自治体は驚いた。
澪は母の手を握った。
そして言った。
「泣かせてくれてありがとう。」
母は答える。
「泣きたいときは泣けばいい。それは成長じゃなく、生きてること。」
AIは静かにスリープへ戻った。
完璧は
間違ってはいなかった。
ただ
完璧では埋まらない何かが
そこにあった。
――第6話 完――
次は
第7話 子ども互換制度と代理育児契約
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