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2133年。
社会は次の課題に気付いた。
子どもを価値主体として扱い
親は管理者となり
教育もAI化された結果――
大人の言語が
古いものになった。
大人の表現は回りくどく
曖昧
責任の所在が不明確
感情の濃度が高い
それは非効率だった。
そこで社会は決めた。
《子どもに最適化された言語を社会標準にする》
子どもの価値指数上昇傾向から抽出した
「最も伝わりやすく
理解しやすく
負担が少ない言語構造」
を規格化。
名付けられた名称は
《ニュートラル子語(Child Neutral Language)》
略称:CNL
これにより
大人は言語訓練を義務化された。
◆ CNLの特徴
例えば
従来の言い方:
「今日は疲れたけど頑張って帰ってきたのよ」
CNLでは
「疲れている。帰宅済み。」
短く
責任がなく
評価が混ざらず
負担が発生しない。
他にも
従来:
「ちゃんと宿題やりなさい」
CNL:
「宿題の残量が3つある。実施可能。」
従来:
「やめなさい!」
CNL:
「継続すると不利益発生。」
従来:
「ありがとう、助かるよ」
CNL:
「あなたが介入してくれた。結果良好。」
子どもに対し
完全に中立言語が適用された。
そして大人は学ぶ必要があった。
◆ 澪(れい)の家庭でも指導開始
家庭AI:
「本日より保護者様はCNL利用が義務です。」
母:
「今までの言葉はどうなるの?」
AI:
「感情負荷が高いため使用は推奨されません。」
母は苦笑した。
◆ 子どもの言語は上手だった
学校で澪たち子どもは既に訓練済み。
友人との会話はこうだ。
友人A
「昼食満足度は?」
澪
「8割。炭水化物比率調整必要。」
友人B
「今日の授業負荷は?」
澪
「低い。復習優先。」
それは
正確で
衝突が起きず
誤解を生まなかった。
しかし
温度がなかった。
◆ 母の苦戦
母が言う。
「澪と一緒にいたくて嬉しい」
AIが指摘する。
「感情的表現です。修正提示します。」
→「あなたとの共有時間、価値発生。」
母は笑えなかった。
澪は静かに言う。
「ママの言葉のほうが僕は好き。」
母は泣いた。
AIは記録した。
《感情過剰反応値+1》
だが母はそれを無視した。
◆ ある日の授業
教師:
「大人は非効率な言語を多用します。
CNLが未来の標準言語です。」
澪は疑問を抱いた。
(効率は大事。でも
心がわからなくなる気がする)
子どもたちは
言葉に心が乗ることを
経験してこなかった。
しかし
それは失われるべきものなのか――。
◆ 夕食時
母は普通の言葉を使った。
「今日も一緒にご飯食べられて嬉しい」
澪はCNLで返してみた。
「共有食事時間が発生。評価良好。」
母は笑い
「やっぱり味気ないわ」
澪
「でも正確だよ?」
母
「正確じゃなくてもいいのよ」
澪
「どうして?」
母
「正確な言葉より…
感じた言葉のほうが私は好きだから」
澪は黙った。
言葉に
正確さ以上の何かがあると知った。
◆ 澪の日記
「CNLは便利。
でも感情が小さくなる。」
「正確な言葉は誤解を減らすけど
“心が揺れた理由”はなくなる。」
「良いこと・悪いことじゃなく
違うものになっている。」
言葉は道具。
道具は変わる。
しかし
人間は道具だけでできていない。
澪は
温かさのある言葉を
忘れないように
心の隅に書き留めた。
――第8話 完――
次は
第9話:子どもが親を採点する日常
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