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2130年。
子どもが価値を持ち
親は管理者として評価され
採用選択権まで発生した。
こうして制度はさらに進化する。
《逆学習義務化プログラム》
親は子どもから学ばなければならない。
しかも 評価対象として提出 される。
授業名は
「育成者再訓練講義」
毎月実施。
子どもが講師役。
親が受講者。
子どもは日常の観察をもとに
親を指導・助言・改善提案する。
制度上
大人はそれを履修しないと
資格が下降する。
◆ 澪(れい)の講義日
澪は8歳になり
初めて母を指導する日が来た。
AIが提示する講義テンプレートには
こう書かれていた。
【本日のテーマ】
「親の感情表出と子の負担の関係」
【観察メモ記入欄】
子どもが負担を感じたタイミングを記録
澪は
母の前に座る。
母は緊張していた。
◆ 授業が始まる
澪
「ママは悲しい時、声が小さくなるよね。」
母
「そうかもしれないね…」
澪
「その声で僕に話しかけると
僕は心配になるんだ。」
母は胸が締めつけられる。
澪は続ける。
「だから感情を出す時は
先に言ってほしいの。」
母
「先に言う?」
澪
「悲しいけど大丈夫、って。」
それは
子が親を安心させるための言葉。
そして
それが評価される。
◆ AIがチェックする
AI
「子の指摘は客観的根拠あり。
改善提案として妥当と判断」
母
「改善…?」
AI
「次回までに実践してください。
子が再評価します。」
母は俯く。
本気で課題扱いされていた。
◆ 翌日
母が仕事で疲れて帰った。
澪に会い
母は言った。
「疲れてる。
でも大丈夫。」
澪は安心した。
しかし母は思った。
(私は安心させられたのか?
それとも評価に従っただけか?)
◆ 学校では…
子どもたちは
互いに指導内容を共有する。
友人
「昨日の授業で
うちの親に“無言のため息”の回数を減らすって言った」
別の友人
「うちの親は“急いで正論を出す癖”を改善中」
澪
「それって…本当に改善なのかな」
友人
「改善の基準だよ。
良いことじゃない?」
澪は返せなかった。
◆ 夜
澪は授業レポート提出の時間。
AIが表示する。
「評価コメントを書きなさい」
澪は考えた。
改善点を書くと
母の評価は上がる。
しかし
澪は書かずに提出した。
理由:
「ママは言われたからじゃなく
僕のために変わろうとしている」
AIは返す。
《宣言には客観性が不足しています》
《再評価対象にします》
ただ
母は笑った。
◆ 澪の記録(自主欄)
「親に教えることは
僕の喜びではなく
僕の責任になる。」
「どっちが育っているのかわからない。」
「僕は教えたいのではなく
ただ話したいだけ。」
履修制度は完成していた。
しかし
その中身は曖昧なままだった。
親は学ぶ。
子は教える。
形式上は円満。
だが
役割を逆転させた制度は
“学ぶ喜び”を消していった。
教えるのは良いことだ。
学ぶのも良いことだ。
ただし
それが関係ではなく
義務になるとき――
そこには育ちが失われる。
澪は気づき始めていた。
――第4話 完――
次は
第5話:子ども投資市場の暴落
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