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子どもは価値主体
親は管理者
AIは補助者
言語は中立化
育成環境は互換可能
社会はほぼ完成した。
その結果
制度は日常化された。
《一日評価制度》
Daily Parenting Rating
通称:DPR
子どもは
親に対し1日ごとに採点を行う。
評価は5項目:
① 安定性
② 過干渉抑制
③ 肯定的関与
④ 感情透明度
⑤ 自己効力支援度
採点結果は翌朝通知され
行政評価データに統合される。
親は
子どもの採点によって立場が変わる。
そして――
この採点は義務化された。
◆ 澪(れい)の採点画面
澪が母を採点する画面には
こう表示される。
【あなたの保護者:前日の行動評価】
□ 安定性
□ 関与強度
□ 心理刺激値
□ 言語負荷
□ 解決行動速度
それぞれ5段階。
澪は項目を見つめる。
昨日
母は洗濯をして
夕食を作り
少し疲れていた。
その疲れは評価に影響する。
澪は考えた。
◆ 評価を記入する
他の子どもはこう採点する。
「疲れてた → 安定性2」
「感情出た →心理刺激値マイナス1」
しかし澪は
その方式に違和感があった。
澪はこう書いた。
□ 安定性
→4(疲れてるのに一緒にいてくれた)
□ 関与強度
→4(話しを聞いてくれた)
□ 心理刺激値
→5(安心した)
□ 言語負荷
→評価なし(測れない)
□ 解決行動速度
→評価なし(急ぐ必要なし)
AIは再確認要求を出す。
「評価理由に客観性がありません。
修正を求めます」
澪は修正しなかった。
◆ 翌朝の通知
母の端末に表示。
《採点履歴:高評価
理由:本人主観》
母は驚く。
「本人主観」という言葉が
評価理由になる世界。
しかし
母は嬉しかった。
◆ 学校での会話
友人A
「うちの親は昨日1点だった」
友人B
「うちは3点。改善努力中。」
澪
「僕は昨日5点つけた」
友人B
「え?なんで?」
澪
「僕が安心できたから」
友人たちは黙った。
彼らは
評価と結果の関係しか知らなかった。
澪は
体験と評価の関係を見ていた。
◆ 夜
澪はふと思う。
「僕はママを採点しているけれど
ママは僕を採点していない」
母は言う。
「採点なんて必要ないわ」
澪
「でも制度では必要だよ?」
母
「制度が必要としても
私は必要としてないから」
澪の胸に
答えの形のない言葉が残る。
◆ 澪の日記
「点数は結果じゃなく
理由になることがある。」
「でも僕は点数を理由にしたくない。」
「ママが僕を見てくれるから
僕は安心する。」
数字は便利だ。
数字は明確だ。
でも
安心は数字では測れない。
そして
安心がある日は
評価はいらなかった。
◆ 最後の言葉
母が寝る前にぼそりと言った。
「明日も採点されるのかな」
澪は言った。
「僕は採点じゃなく
覚えていたいだけ。」
母
「何を?」
澪
「今日、一緒にいたこと。」
評価とは
比較のためのもの。
しかし思い出とは
保存のためのもの。
採点される日常は続く。
しかし澪の中では
採点されない記憶が確かに残った。
――第9話 完――
次は
最終話:子どもが大人を育てた結末
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